富士頂上を目前に人、人、人、進めな〜ィ。進みた〜ィ。
もうすぐ陽が昇る・・もうダメ・・と思った瞬間・・「体力の余って
いる人は道を外れ、岩を駆け登って頂上で待っていて下さい。」
・・ガイドの言葉が響くや否や、一気に岩を駆け登った。
御来光館辺りから薄っすらと雲間が色付き始め、ついに頂上でピッタリ
御来光。もう感動でジワ〜っ。下界はすっかり晴れ渡り、河口湖、山中湖
がハッキリ、クッキリ。雄大な景色にウットリ。
視界を遮るものは何も無く、ただただ広がる陽の光。辺りはシ〜ンと静か。
薄暗い空と薄く見える山々・・一瞬の出来事。
頂上は寒かった。頂上から下を見下ろすとヘッドランプで登山道が光の道
となりギッシリと人で埋め尽くされている。霧もなく絶好の天気で圧巻。
本当に幸運が幾つも重なった。
今年は残雪が例年より遅くまで有り、山小屋の人達が除雪して1日に山開き
を迎えたと言う。しかも登頂は許されず、8合目止まり。そして悪天候の日々。
ところが11日から12日にかけて今年初の登頂と下山道が解除となった。
はとバスのガイドさんは「富士山の天気は変わり易く、登って降りるまで必ず
雨は一度は降ります。」と確信を持って言い放っていた・・にも関わらず、一度
も雨は降らなかった。しかも頂上も下界も霧が晴れ、素晴らしい景観だった。
あくる日の13日、朝仕事に出勤する道中、筋肉痛も疲れも何も感じない自分が、
何となく変に感じ、気が抜ける思いだった。こんなもんかな〜?
富士登山って思いのほか楽?気圧の問題だけ?そんな事を考えていると、その日
の夜13日pm.8:05頃、落石事故が起きたというニュースが流れた。
富士山新5合目駐車場に駐車していたキャンピングカーを落石が直撃し、車内にいた
男性が死亡。落下したのは直径約1メートルの岩で、高さ約3メートルの石積みの上
に設けてある鉄製フェンスを突き破った。男性の車はフェンスの真下に駐車しており、
岩が天井を貫通したうえ、約10メートル転がって止まった・・というニュースだった。
何と運の悪い人なんだろうかとお気の毒に思い、それと同時にヒヤッとした。
一日違い。落石事故の前と後では気持ちの上で大きな違いが有っただろうと思う。
もしかしたら、富士登山は断念していたかもしれない。
締切ギリギリでねじ込んだバスツアーの参加にも関わらず、バスの座席は一番前。
しかも席を独り占め。満員でキャンセルが出た為のラッキー席だった事が後で分かった。
今回の富士登山は他の2000m近辺の登山と違い、一歩一歩が歩幅が狭く、登るのに時間
を通常の倍の時間をかけている。高山病予防の為である。
あまりのユックリさ加減に最初は戸惑った。しかし一歩一歩確実に踏み締める足元の確かさ
に人生を感じる思いがした。偶々巡り合ったバスツアーの仲間達・・残念ながらリタイア
した人達、ゲーゲー吐きながら登頂した人、ヒーヒー言いながら路肩にへばり付きながら登
った若い学生の人達、以外とタフな熟年・・励まし合いながら登った。
人生は、一人で歩くものでは無い。
急がなくてもいい。一歩一歩ゆっくり、周りを見る余裕が必要。
励まし合いながら、自分の為に、今できる事を、今やりたい事を、できる事と出来ない事を
自分で見極めながら歩けばいい。そんな事が実感できた登山だった。
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