すると男子学生が一生懸命走っている姿が見えた。
某大学の体育祭だった。
競技場は昨年リニューアルされたばかりで人工芝生は青々とし、
レンガ色のトラックに7本の白いレーンがクッキリと鮮やかだった。
大学キャンパス内の銀杏並木から少し横に外れると見えて来る。
この町に住みついて数十年、初めて見る体育祭の光景だった。
メインスタンドは大学院棟に隣接するという変わった造りで、自由に
キャンパスを通り抜ける際、簡単に鑑賞できる位置にある。
そんな分けで、ちょっと帰宅途中に観戦する事にした。
次々とトラック競技が続き、一生懸命走る男子学生の姿が、すり鉢状に
なった観客席から、はっきりと見えた。
800mレーンは長い。途中、力尽きて順位がどんどん入れ替わる様は、観客
にとっては非常に面白かった。
最後の種目は運動クラブによる800mリレーだった。野球部、柔道部、テニス
部、水泳部等が紹介され、6チームは同じ線上にスタートラインが在った。
最後に紹介された陸上部は、なんと25m後方からのスタートだった。
こんなにも走るフォームが違うのかと思う程、陸上部の走るフォームは美しく
速かった。第一走者は、どんどん差を詰め、最終走者は200m位、引き離しての
ダントツ1位。風を切るような走りだった。観衆のどよめきも凄かった。
久々の大興奮!それもその筈だった。
日体大最終フィールド競技会において、今年の10月18日(日)に男子800mで、
1分46秒16の日本記録を樹立した選手が第一走者だったのだ。
偶然とは言え、素晴らしい走りが目に焼き付いて数日離れなかった。
もう感動と躍動感。そして懐かしさで一杯になった。
遠く十数年前に遡る。
長女が幼稚園の頃、仕事が休めなくて、運動会は義母に行って貰っていた。
長女の卒園の文集を見て驚いた。娘に“かけっこ”で勝てない悔しさを訴えた
男の子の文章が載っていた。
その文章は衝撃的だった。
娘は足が速くて周囲から羨ましがられていた。それに全く気が付かなかった。
自分の仕事が手一杯で、子供の事が眼中に無かった。
今、思い出すだけでも胸が痛い。
長女が小学入学と同時に専業主婦になった。
色んな事に泣いたり、笑ったり瞬く間に時が過ぎた。
忘れていた思い出が、風を切って走る選手と重なって甦ってきた。
自分の学生時代、子供の学生時代、懐かく素晴らしき時代。
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