2008年04月11日


ひろみん <臨床検査技師・ひろみんのラブ&ピース>

ターニングポイント

空白?白光?異次元?

ハンドル操作不能!!!
目は閉じていないはず・・なのに視界には何もなかった。
真っ白というより意識がどこかに飛んだのだろうか?

次の瞬間、反対車線のバス停の前に真っ逆さまに落ちた。
車の転倒事故。全損。

見通し良好。真っ直ぐに伸びた道路は何の障害も無さそうに見えた。
今から3年半前、肌寒い秋の早朝に起きた出来事だった。

その日は平日で、少し離れた友人宅に、書類を取りに行く予定だった。
朝食前という事も有り、気持ちの余裕は無かったように思う。
運転歴は約25年でゴールド。運転には多少の自信があった。

納品後、一か月も経たない新車で、しかもマニュアル車。
どんなにスピードを上げたとしても、高速道路以外では3速までしか
使わないようにしていた。

3車線の左端を走っていたが、前方500メートル位の所に大型トラック
が停車していたので真中の車線に車線変更しようとした。
ハンドルを右に切った瞬間、ハンドルがグイッと引っ張られたかと思うと
フワッと浮いた感じがした。原因不明。

初めての感覚に戸惑いながらもバックミラーを確認したが、数台走っていた
筈の車は一台も見当たらなかった。そのうちハンドルは全く操作不能になり、
ただジグザグと走った感覚だけが自分の意識の中に残った。

距離にして約500メートル、時間にして僅か5〜10秒。

その5〜10秒間は、まるでスローモーション状態で、「自分が事故死する筈が無い」
と何度も思いながら「あっ、もう死ぬ。ごめん!」という家族、特に子供に対する離別の
悲しみにも似た諦めの思いだった。

「生きたい」という極限状態の思いが、現実認識を拒否したのだろうか?
視界には、真っ白な光以外、何も見当たらなかった。

上下逆さ状態になりながら青空を眺め、生きている自分を確認するなり、「勝った!」
と瞬時に思った。

何に「勝った!」のか?自分自身の生き方に「勝った!」と思えた。

何故か、奇妙な程、笑えた。腹の底から笑いが込み上げた。
無傷な自分とグシャグシャの車が対象的で妙に非現実的だった。

車は信号が赤で一斉に停止中。バスも丁度、バス停に着いたばかり。
その為、他人を巻き添えにしなくてすんだ。

数秒ずれていたら大事故で多数の死者が出たかも知れなかった。
それを思うと、本当に考えられないくらい幸運だった。

この大事故は自分のターニングポイントになった。

事故る前は常に時間に追われ、自分を追い立てるように生きていた。
事故った後は、ゆっくり、楽しみながら自由に生きようと決意した。

何かに囚われていた自分が、解き放たれたような爽快感。
ずっと悩み彷徨い続け、持て余し気味だった自分の生き方を肯定されたような安心感。

あの時の、例えようのない神々しさは、時空を超え、いつでも自分の脳裏に蘇る。


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posted by CSNメンバー at 18:49 | Comment(0) | TrackBack(0)
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