何がその人にとって耐え難いストレスになるかは、人によって違います。他の人には大したことに思えなくても、その人にとっては物凄いストレスを感じるということはよく見られます。例えば「人前で話す」ということにしても、それほど苦痛に思わない人もいますが、苦手意識のある人にとっては大変なストレスを感じるでしょう。
この苦手意識というのはある種の「思い込み」です。アルバート・エリス流に言えば「イラショナルビリーフ(誤った信念)」ですね。この「信念」は「否定的なイメージ」を伴います。それは「失敗」のイメージです。知らず知らずのうちに「自分にはできない、きっと失敗する」という結果を思い描いてしまう。そして見事に失敗する。彼(彼女)は「あゝ、やっぱりダメだった…」と、思い通りの結果に落胆し、「やっぱり私はダメなんだ」というビリーフを益々強化してしまう。彼(彼女)はそのときまさに「脚本」を生きているのですね。
TAでは、人間を「行動」と「思考」と「感情」のセットとしてとらえています。「きっとうまくいかない」という思考は、不安や緊張などの感情を呼び起こし、そして行動に影響を与えるのですね。エリスの提唱する「論理療法」は、この「思考」の偏りを是正することで、「感情」や「行動」を是正していこうとするものです。「認知療法」というのもそうですね。誤った「認知」が感情や行動を現実にそぐわない不適切なものにすると考える。また、「行動療法」というのは、とにかく行動することで、その原動力になる思考と感情をコントロールしようとします。最近よく見られる「認知行動療法」というのは、その両方からのアプローチを使います。
私は「催眠療法」を手がけますので、「感情」からのアプローチというのも使います。呼吸や姿勢で身体をリラックスさせることで心の緊張を緩め、自分にとって心地よいイメージを喚起するのです。繰り返すことでイメージが定着していき、思考と行動に変化を及ぼします。
「脚本」の土台には必ず「自分はダメだ」という否定感があります。この感覚は人生の過程で何回となく繰り返される体験で強化され、その人にとって揺るぎのないものになってしまいます。ここから脱却するには、上記のいずれの方法でもよいので、自分の「行動」「思考」「感情」を少しずつ変えていくことが必要です。昨日は「思考」を「イメージ」に置き換えて、「失敗」のイメージを「成功」のイメージに変えていくということを話しました。
その話のときに「いつも成功しなければならないのですか?」という質問が出ましたが、そんなことはありません。「失敗」を自分に対する否定感につなげなければよいのです。「成功」をイメージできていると、「失敗」は「成功へのプロセス」としてとらえることができ、その時点で「脚本」に陥ることが少なくなります。「イメージ」というのは、心と身体の両方に作用しますので、ストレスに抗する非常に有効なツールになり得ます。是非使ってみてください。
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