私がトマトを好きになったのは、子どもの頃にとてもおいしいのを食べたからだと思います。昔は、大きな背負いかごをかついだ農家のおばさんがこのあたりを
一軒一軒回って野菜を売り歩いていました。うちにも毎週のようにやってくる馴染みの人がいて、夏になると真っ赤に熟れた大きなトマトを幾つも持ってきてくれました。その頃はまだ氷入りの冷蔵庫でしたが、その氷の上にトマトを載せて冷やし一日に何個も食べました。汗みどろになって学校から帰るやいなやランドセルを放り出して冷蔵庫を開け、おやつ代わりにその赤い大きな実にかぶりついた子どもの頃の記憶は、その鮮やかな色や濃厚な甘みを湛えた味とともに今でもくっきりと蘇ります。
世の中が豊かに便利になっていくのと引き換えに、トマトはどんどんまずくなりました。かごを担いだおばさんの姿もいつしか見なくなり、子どもの頃のあの味は今や幻想になりつつあります。
少し前まではその幻想の味を追い求め、ネットショッピングでやたら高いトマトを注文したこともあります。その名も「幻の塩トマト」。何と9個入りの箱が3,800円。届いたときは、小ぶりのダンボールに宝石のように並べられたつややかなトマトに胸高鳴らせながら、まるで貴重品でも扱うようにそーっと一粒を取り出したものです。この1個が400円以上につく。ケーキより高いトマトです。否が応でも期待は高まる。いよいよあの幻の味と「ごたいめ〜ん」なるか!!
一口かぶりついて「・・・・」。皮がやたら硬いし果肉はやたらすっぱい。期待していたあの妙なる甘味の「か」の字もない。それでも諦めの悪い悪あがきかなりん。「もしかしてこの1個だけがはずれたのかもしれない」ともう一つ、
そしてもう一つとかぶりついてみた。みたけれどどれも同じ。ならばとわざわざ火を通してトマトソースを作ってもみた。みたけれど、特においしくもならない。
釣り書きにある「昔ながらの濃厚な味。生で食べても火を通しても絶品!」の文字がやたら虚しく見える。これならば近所の八百屋のすっぱいだけのトマトと何ら変わりがない。「チクショウ!だまされた。もう2度とヤフーのグルメショップで買い物なんかするものか!」と唇噛んだかなりんでした。
その後、さすがに生協のトマトはいくらかまし、ということに気がつき、そして夏季限定予約販売のトマトに出会い、今年は「農薬半減特別栽培トマト」というのもなかなかというのを知り、今では「幻」とまではいかずとも、結構いい線いってるトマトライフを満喫しております。
それでもやはり忘れられぬあの味。
♪Where have all the tomatos gone…
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