今回のサイコドラマは、「キャリアサポーター養成講座」の一環として行ったものなので、受講生の皆さんには「内面の問題をドラマで扱う」ということはどういう意味があるのか、ということを深く感じてもらうことを主眼としていました。一般からの参加は募らなかったので、ちょっと参加者が少なかったきらいはありますが、他のメンバーに自分の役をやってもらって、客観的に状況を俯瞰することができたのではないでしょうか。
「ドラマ」の持つ非日常性と、そこに生まれるある種の高揚感は欠かせぬ要素なのですが、私は「曲者」でもあると思っています。「ドラマ」は「虚構の世界」であることは確かなのですが、それが全く現実につながっていなければ、単なる独りよがりになってしまいます。これが劇場でやる「演劇」であるならば、観客をひと時の夢に酔わせる、というのもありでしょうが、サイコドラマにはそれとは違った意味合いがあると思います。
グループがカリスマ的なファシリテーターによって「集団カタルシス」のような状態になることが好ましいことではないように、「内面への気づき」や「創造的な人間関係」を得ることを目的としたサイコドラマが、過剰なカタルシスに彩られるのは避けたほうがいいと考えます。カタルシスは一歩間違えると非常に喜劇的になってしまいがちだからです。A子さんがあえて自分の役を他のメンバーにやってもらったのは、そういう余計なものを排するという意味では良い選択だったのではないかと思います。
「ドラマ」を使ったワークでは必ず事前に参加者の緊張をほぐすようなゲームを入れるのが常ですが、昨日は十分関係のできているメンバーのみの参加だったので割愛して、代わりに少しエンカウンター風の話合いをしました。「ドラマ」の進行も現実的な状況を踏まえて、「結末」はA子さん本人に任せました。苦い現実をどうにかしていくエネルギーは彼女自身のなかに必ず存在するからです。それを阻むものは何か、それもまたA子さんが直面するしかないものです。そのことを実感し、スッキリとはしない思いを抱えていくことも、「キャリアサポーター」をめざすA子さんには必要なことだと思います。
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