卒業式といえば、最近朝日新聞でこんな社説を読みました。題して「そこまでしなくても」。何が「そこまで…」なのかというと、今年都教委が全都立高校の校長宛に「卒業式での日の丸・君が代に関する通達」を出したというんですね。何でも去年のある定時制高校の卒業式では20名の卒業生全員が日の丸掲揚の際に起立せず、君が代も歌わなかったのだとか。その他の高校でもこの問題をめぐって教職員と校長の間がかなりぎくしゃくしているらしい。そこで今まで「お願いします」という意味合いの「通知」だったのを、いきなり「そうしろ」という命令的な「通達」に改め、従わない教師は、生徒への指導力が欠如しているとみなして校長の権限で「処分しろ」ということになったのだそうです。
社説には「先生の囲い込みに失敗した都教委は、最後の砦である生徒に攻め込もうとしている。即ち『君たちが従わなければ、先生が処分されるんだよ』と脅して生徒達に無理矢理本意でない行為を強いようとしているのだ」というようなことが書かれていました。そして都教委がこれほどまでに強硬な姿勢をとる背景には、政界での急激な右派勢力の台頭があると分析していました。
私の身近にも最近のそうした学校の傾向に嫌気がさして辞職したという先生がいます。その方は小学校の教師でしたが、考えてみればまだ自分の考え方が固まらない時期に及ぼす影響の方がもっと怖いという気がしますね。「日教組」が猛威をふるった私たちの時代も、それはそれで危険なこともありました。いずれにせよ「支配」から最も遠くあるべき「教育」が、たやすく「支配」の標的になるのは、「教育を制するものは世界を制する」と言われるゆえんでしょうか。
何かというと「心の教育」とか言い出す文部省(今は呼び方違う?)ですが、その陰に隠れて旧態依然とした「道徳教育」の復活を目論む向きもあるとも聞きます。一方で経済界が教育に介入してくる風潮も目につきます。1人1人がしっかりと目を見開いていないと、じわじわと浸食してくるものに気づかず、力に流されてしまうことになるでしょう。特に若い人たちは、あくどい大人の意のままにならぬようくれぐれもご用心あれ!