今年のお正月はお雑煮食べて箱根駅伝見ただけだったなぁと短い休日を振り返っていたら、昔私が塾をやっていた頃の教え子が年始の挨拶に来てくれました。律儀なのよね、彼、昔から。もうすっかり大人になってしまった彼ですが、私とは3才からのつき合いです。というのも今は昔(おとぎ話チックですが、それほど昔のことなのです)、私が某出版社系の塾で幼児教育のインストラクターをしていたという秘められた(別に秘めるほどのことじゃない?!)過去があるからなのです。
3才の彼はいつも私の顔を見ると「勉強なんかヤダ〜」と床にひっくり返ってだだをこね、一緒にいるお母さんを困らせたものでした。今はやりの「お受験」はその頃からあって、特に公立の学校がいろいろ問題を表出させていた頃だったので、熱心な親御さんもおられましたが、彼のところはそんなこともなくのんびりとしたものだったので、私も無理強いせずのんびりとやっていました。
それでも彼は小学校高学年くらいになると、急に成績が伸び始め、ちょうどそのころ自宅で私塾を開いていた私のところへ通い、私立中学を受験して見事トップの成績で合格、月謝無料の特待生となったのです。その後もずっと私の塾へ週2〜3回のペースで通い続け、体育の時間に骨折したときを除いては、一度も欠席したことがないという真面目な秀才でした。そして何と中高6年間を通して学年トップの座を守り続け、一流大学への入学も果たしました。町の片隅のちっぽけな私塾に通いながら、よくそこまで成し遂げたなぁ…と本当に感心しました。
ところがそんな彼にも、まあ、そんな彼だからこそですが、自分が本当は何を感じ、何がしたいのかが皆目分からなくなって悩み苦しむ日がやってきたのです。それはちょうど彼が大学の卒業を来春に控えている年のことでした。久しぶりにサンプラザ相談センターに姿を見せた彼は、どうしても前へ進めなくなってしまった自分に苛立ち、大人しくて真面目なイメージとは全く違った彼の内面の思いをぶちまけました。それは怒りと不安がないまぜになったような彼自身どう扱ってよいのか分からないような強烈なものでした。私は彼と何回か面接を重ね、フォーカシング技法を使ったセッションを入れながらカウンセリングを続けました。でも大学だけは卒業したものの、就職活動の方はまるでだめで、狙った公務員試験も軒並み落ちてしまった彼は、就職を一年延ばし、自分でフォーカシングを学びながら、自分を見つめ直す一年を過ごしたのです。そして一年後、某公的機関に希望通りの就職を果たしました。彼はそれを機に実家を出て一人暮らしに踏切り、一番の重い課題だった「親との関係」をもう一度自身の内に構築し直したようです。
もう今春で社会人生活5年目を迎えるという彼にこうして会って話していると、あの頃のことが嘘みたいに思えます。いまだにフォーカシングの合宿などに参加しながら、見違えるように深い内面的感覚に鋭敏になり、一方で社会的な生活も全うしている彼に接すると、誠に頼もしく感じられます。時折こうして訪ねてくれるのですが、つい時の経つのも忘れて話し込んでしまい、私のほうが教えられたり気づかされたりすることも多々あります。今日も随分長い時間話をしてしましました。
思えば彼とは25年くらいのつき合いになりますね。私は過去の仕事のおかげで、そういう幼児の頃からの縁を紡いできた生徒さんが他にも何人かいます。こんな得難い関係に恵まれていることをとても幸せに感じます。短い休日の最後に豊かな時間をプレゼントしてくれた彼に感謝です。
さあ、明日から仕事だーっ!!