2013年05月19日


かなりん <カウンセラーかなりんの遊々随想>

刻印に思いをこめて―「ノーマライゼーション」

 今CSNでは革小物の試作を行っている。
その製品のロゴにしたのが「Normalization(ノーマライゼーション)」という言葉。
製品には全てこの刻印を押し、言葉の意味を説明したタグもつける。
だがこの言葉、なかなか日本語に訳しづらい。

 「ノーマライゼーション」とは、直訳すれば「正常化」もしくは「標準化」
という味もそっけもない意味である。しかしこの言葉、福祉の世界ではまことに
由緒も含蓄もある言葉なのだ。

 時は1950年代のデンマーク、知的障害者の環境改善運動におけるスローガン
として高々と掲げられたこの言葉は、その後世界を駆け巡り、アメリカでは
人種差別撤廃運動の場でも使われるようになった。

 こうして「障害者が普通に当たり前に生きる」ことを謳ったこの言葉は、
現在では「障害者も高齢者も子どもも女性も男性もすべての人々が、
人種や年齢、身体的条件に関わりなく、自分らしく生きたいところで生き、
したい仕事や社会参加ができる、そうしたチャンスを平等に与えられる」
という幅広い理念を表わす言葉となっている。

 「ノーマライゼーション」という言葉には、沢山の当事者や支援者の思いと
苦難の戦いの歴史が詰まっているのである。今その戦いの足跡は、世界各国の
法律や人々の意識の変化に見出すことができる。とはいえ、未だこの考え方が
社会にしっかりと定着したとは言い難い。たとえささやかな試みではあっても、
「誰もがその人のもつ条件に左右されずに当たり前に生きることができる
成熟した社会への変革」を、私たちがつくる製品を通して市井の片隅から
発信していきたいと思っている。


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