八王子の霊園に行き、久しぶりの墓参りをしてきました。
そこには私の祖母と母の骨も納められています。
92歳の伯母は、納骨の前に生前伯父が使っていた
眼鏡と手紙を骨壷に入れました。「最後のラブレターよ」
と言いながら。
伯父夫婦には子どもがなかったので、私が形だけの
養女になっていますが、実際は伯母の妹の息子である
従弟の一家がこまごまと面倒をみてくれています。
今日はその従弟一家と伯母と私の6人の一行でした。
伯父は最後までぼけもせず、足腰こそ弱ってはいたものの、
食事も排泄も人の手を借りずにしていました。90歳になろう
というときに家を建て直して伯母に残し、葬儀の仕方も
詳細に指示して、「お別れの言葉」や「喪中はがきの文面」まで
作ってありました。全て伯母が困らないような配慮をして
見事に生を全うしました。
それでも伯父はかなり気難しいところのある人で、気に入らない
ことがあると何ヶ月も口をきかなかったり、伯母が自分より遅く
帰るのを許さなかったり、私だったらとても我慢できないような
関白ぶりで、伯母も「何度ももうこれはだめかな」と思ったと
いいます。けれどもこうして添い遂げたのは「愛しちゃってた」
からだと、伯母は92歳の老婆とは思えないようなことを臆面も
なく口にします。
伯父が亡くなる3日前に伯母は「今も私のこと愛してる?」
と尋ねたそうです。伯父は「うん、愛している」と答えたと、
伯母は満足そうに語っていました。
伯父は私にも少しですがお金を残してくれました。
ちょうどNPOで新事業を展開しようという計画が進んで
おり、資金をどうやって工面しようかと悩んでいたところ
だったので、本当に願ってもないタイミングでした。
その新事業というのは、「ドーナツの製造販売」で、
設立以来の悲願である雇用創出事業につながる
可能性のあるものです。今日は墓前にそのドーナツを
供えて事業の成功を祈ってきました。往きの車中では
従弟一家にも食べてもらいましたが、高校生と大学生の
二人の娘たちにも「おいしい」と大好評。とても励みに
なりました。
納骨を無事済ませて、昼食をとりに訪れた高尾山は
折りしも紅葉の真っ盛り。鮮やかな赤に彩られたもみじの
葉に見とれながら、おいしい料理を頂きました。伯母は
そこにも伯父の写真を持参してしきりに話しかけていました。
温厚で善良な従弟と、飾らず出すぎずに物事をてきぱきと
さばく妻。どこまでも健康そうな若さが輝く二人の娘たち。
伯母はまだ気丈に一人暮らしを続けていますが、この一家に
見守られていれば、決して孤独ではないでしょう。こういう絆も
伯父が残していった大きな遺産なのだと思いました。
しみじみと伯父の残してくれた様々なものを料理とともに
味わい、空も心も晴れ渡るすてきなひとときでした。
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