その方はご本人の弁によると、「ブックオフを通りかかると自然に
吸い込まれていってしまう」という体質の持ち主らしく、その都度かなりの
量の本を買い込み、読み終わったもののなかから、CSNに関連するような
内容のを選んできてくださるので、なかなか参考になる本が多く、
皆で喜んで廻し読みしています。
その中で私がこのところ読んだのが、所謂「婚活」に関する本です。
一つは、樋口康彦著「崖っぷち高齢独身者」、そしてもう一冊は、
山田昌弘、白河桃子共著の「『婚活』時代」です。この本は
真っ先にA子さんが目を輝かせて持っていってしまったのが、
昨日返ってきたので、今日の午前中に読みました。
前者の著者は40代の大学講師で、自分の5年間に渡る
「婚活」の実態を記録したものです。114回ものお見合いパーティーに
出席し、結婚相談所で68人とお見合いをしたという猛者ですが、
未だ結婚には至っていないそうです。
後者は、「婚活」という言葉をつくった学者と女性ジャーナリストが
書いたもので、昔機能していた結婚の社会的システムが崩壊したために、
多くの結婚難民が出現しているという昨今の状況について、
データや取材をもとに解説しています。
その本によると、5年前(2000年)に未婚だった20代後半の女性は
54.0%、5年後(2005年)に30代前半になった彼女達のそれは
32.0%と推移し、同じく30代前半から後半に移行した女性達の推移は、
26.6%→18.6%だそうです。
今50代以上の男女の未婚率が5〜6%であることを考えれば、
確かに大きな数字かもしれません。しかしこの世代の私から言わせれば、
「何だ、まだそんなものなの?」という感じです。
結局30代後半になれば8割強の女性が結婚してるんじゃない!
これほど価値観が自由になってどんな生き方でも選べる時代に、
まだまだ絶対多数の若者たちが「結婚」という旧弊な制度に
しがみついていることの方が不思議です。
「紅白歌合戦」の視聴率だって50%台に下がったっていうのに!
「結婚して子どもを産んで家族のために生きるのが女の幸せ」と
よってたかって言い聞かされ、一人で生きていくような才覚も術も
獲得できぬまま、「そんなものか」と思って結婚したものの、臍をかむ
ような思いに苛まれ、後悔の涙にくれた女達が、私たちの世代には
沢山います。そんな状況のなかから「ウーマンリブ」が生まれ、
「フェミニズム運動」が育ってきて、今や「男女共同参画社会」の
かけ声もかまびすしい世になったのを見ると、まさに隔世の感あり
なのですが、内実はそんなものでもないっていうことなんでしょうね。
「『婚活』時代」は、未婚化が進む状況を「少子化問題」と絡めて、
しきりに「何とかしなくちゃ!」と鼓舞する論調に貫かれています。
まあ、社会学者が書いたんだからそうなるのもしゃーない、とは
思いつつ、日本の高度成長時代に「企業戦士」の家政婦兼慰安婦
として生きれば、法的な権利はばっちり付与してあげるよ、という
国家の甘言にむざむざと乗せられて、忍耐を強いられてきた女達の
無念はどうしてくれるのよ!と言いたくなっちゃいますね。
要するに、今までは国家が総出で「結婚」という制度で国民を
囲い込み、社会を挙げて「結婚しなけりゃ一人前じゃない」とか、
「結婚こそが女の幸せ」とかの価値観を散々インプットし続けて、
男ならいかに無能でも何とかやっていける社会を築きあげていたのが、
それを支える経済力が弱まり、足元に火がついてそんなことも
言っていられなくなり、企業社会に役に立たない男は切り捨てざるを
得なくなったということではないでしょうか。それで結婚したくても
できない男達が激増し、それに伴い女達の未婚率も上がる。
子どもも少なくなる。当然の帰結でしょう。
確かに少子化は、日本経済の国際競争力を弱める要因と
なるかもしれません。しかし女達は日本経済のための働き蜂を
産み育てたいのでしょうか?戦時中は「産めよ育てよ」と、
国家のために戦う兵士を量産することを奨励されました。
しかし元来子どもは国のために産むものではありません。
少子化が個人の選択的決断の結果ならば、それはそれで
仕方がないじゃありませんか。
結婚制度とは、突き詰めればお上が民を管理し操作するために
最も都合のいい制度です。その制度の根幹を握っておけば、
鞭と飴を駆使して国民をいかようにも方向づけられるのですから。
しかしそんな思惑をよそに、この制度に「恋愛」という厄介な代物が
絡んできて、どんどん自由度が増し、もう結婚は殆ど個人の領域に
委ねられ、それにつれて困難度も増しているということになっている
らしい。「自由」というのは、得られないときは渇望の的でもありますが、
獲得してみれば過酷な面もあるものですから、それはそれでやはり
仕方がないでしょうね。
全てが良いなんてものはこの世にはありません。
今女性達は制度のしがらみから解放されつつあるというのに、
その果てにある「孤独地獄」の幻影に怯えて、またしがらみのなかに
自ら戻っていこうとしているように見えます。
「婚活」などという耳障りのいい言葉にだまされず、自分の足元を
しっかり固めて選択的な生き方をして欲しいものです。
それでもやはり結婚することを選び、しがらみを引き受けるのも
それはそれで選択的な生き方だと思います。従来の価値観を支持する
人がいても構わないし、それが自由というものです。しかしこういう風に
考え方が拮抗する事象においては、選択率も半々くらいの割合に
なったっていいんじゃありません?それがならないのは、やはり
「不安」という感情に引きづられてしまうからじゃないんでしょうか。
スローガンは「未婚率を紅白なみに!」です。
若い女性達の健闘を祈ります。
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